「飲食店を開業したいけれど、事業計画書をどう書けばいいかわからない」。これは多くの開業希望者が最初にぶつかる壁です。

事業計画書は融資審査を通過するためだけの書類ではありません。自分のビジネスの全体像を数字で可視化し、開業後の経営判断の羅針盤となる重要なドキュメントです。計画段階で甘さがあれば、開業後に資金ショートや集客不振という形で表面化します。

この記事では、日本政策金融公庫の創業計画書フォーマットに沿って、飲食店の事業計画書の書き方を項目別に徹底解説します。売上予測の計算方法や収支計画の具体例、審査員が見るポイントまで、融資を勝ち取るための実践的なノウハウをお伝えします。

なぜ飲食店に事業計画書が必要なのか

事業計画書は「融資のために仕方なく作る書類」ではありません。計画書の作成プロセスそのものが、開業の成功確率を高めます。

融資審査で事業計画書が果たす役割

飲食店の開業資金は、物件取得費・内装工事費・厨房設備費・運転資金を合わせて1,000万〜2,000万円が相場です。自己資金だけで賄えるケースは少なく、ほとんどの開業者が日本政策金融公庫や信用金庫からの融資を利用します。

融資審査において、事業計画書は以下の役割を果たします。

  • 返済能力の証明:売上予測と収支計画から、毎月の返済原資が確保できることを示す
  • 事業の実現可能性の提示:市場分析や競合調査をもとに、計画が絵空事でないことを裏付ける
  • 経営者としての資質の証明:計画の論理性や数値の根拠から、経営者の思考力と準備の質を伝える

日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金の2〜3倍程度の融資が一般的な目安です。事業計画書の完成度が高ければ、融資額の上限が引き上げられるケースもあります。

自分の思考を整理し経営の羅針盤にする

事業計画書を作成する最大のメリットは、自分のビジネスモデルを客観的に検証できることです。

「なんとなくうまくいくだろう」という感覚ベースの計画では、以下のような見落としが生まれます。

  • 売上予測の根拠が曖昧で、実際には想定の60%しか達成できない
  • 固定費の見積もりが甘く、開業3ヶ月で運転資金が底をつく
  • 競合店との差別化ポイントが不明確で、価格競争に巻き込まれる

事業計画書の作成を通じて数字に落とし込むことで、こうしたリスクを開業前に発見・対策できます。事業計画書は融資のための書類であると同時に、自分自身のためのビジネスの設計図なのです。

日本政策金融公庫の創業計画書テンプレートの全体像

飲食店の開業融資で最も利用されるのが日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。この融資に必要な創業計画書のフォーマットを把握しましょう。

創業計画書の8つの記載項目

日本政策金融公庫の創業計画書は、以下の8項目で構成されています。

項目番号記載項目内容
1創業の動機なぜこの事業を始めるのか
2経営者の略歴等これまでの職歴・飲食業の経験
3取扱商品・サービス提供するメニューや業態の特徴
4取引先・取引関係等仕入先・外注先・販売ターゲット
5従業員雇用予定人数・雇用形態
6お借入の状況既存の借入金の残高
7必要な資金と調達方法設備資金・運転資金の内訳と資金調達計画
8事業の見通し(月平均)売上高・売上原価・経費の月次計画

このテンプレートはA3用紙1枚にまとめるフォーマットですが、記載スペースが限られているため、別紙で詳細な資料を添付するのが一般的です。

別紙で準備すべき補足資料

テンプレートの記載欄だけでは伝えきれない情報を、以下の別紙資料で補足します。

  • 月別収支計画表:開業後12ヶ月〜24ヶ月分の売上・経費・利益の月次推移
  • メニュー表(案):提供予定メニューと価格一覧
  • 物件情報:立地の地図、物件概要書、周辺の人口・競合データ
  • 経歴書の詳細:飲食業での経験を具体的にアピールする職務経歴書
  • 資金繰り表:開業前後6ヶ月間の月次キャッシュフロー

これらの補足資料を用意することで、審査担当者に「しっかり準備している」という印象を与えられます。

記載項目別の書き方|創業計画書を完成させる

創業計画書の各項目について、飲食店に特化した書き方のポイントを解説します。審査担当者が何を見ているかを意識しながら書き進めましょう。

創業の動機・経営者の略歴の書き方

創業の動機で審査担当者が見ているのは、「なぜ今、この場所で、この業態の飲食店を開業するのか」という必然性です。

避けるべき書き方と、効果的な書き方を比較します。

NG例: 「料理が好きで、いつか自分の店を持ちたいと思っていました。飲食業界で10年働いてきた経験を活かして独立します」

OK例: 「和食店で10年間(うち料理長5年)の実務経験を積み、延べ50,000食以上を提供してきました。勤務先の〇〇エリアで、ランチ需要の高い30〜40代ビジネスパーソン向けの定食業態が不足していることに着目し、その需要を取り込む業態で独立を決意しました」

ポイントは以下の3点です。

1. 経験の具体性:年数だけでなく、役職や実績を数字で示す 2. 市場機会の根拠:ターゲットエリアの需要を調査した上での判断であることを示す 3. 経験と業態の一貫性:これまでの経験がこの業態で活きる理由を明確にする

経営者の略歴は、飲食業での経験年数が長いほど有利です。調理・接客・店舗マネジメント・仕入れ管理など、経営に必要なスキルを実務で習得してきたことを具体的に示しましょう。

取扱商品・取引先・従業員の書き方

取扱商品・サービスでは、メニューの特徴と客単価を明記します。

  • 業態とコンセプト(例:国産食材にこだわった和食ランチ&ディナー)
  • 主要メニューと価格帯(ランチ:900〜1,200円、ディナー:3,000〜5,000円)
  • セールスポイント(競合との差別化要因)
  • 販売ターゲット(年齢層・利用シーン)

取引先・取引関係等には、仕入れ先の候補を具体的に記載します。

取引先内容選定理由
〇〇水産(仕入先)鮮魚全般前職からの取引実績あり、品質と価格のバランスが良い
△△青果(仕入先)野菜・果物地元農家との直接取引で新鮮な食材を確保
□□酒販(仕入先)酒類・飲料地酒の品揃えが豊富で配送対応が柔軟

従業員は、開業時と軌道に乗った後の雇用計画を分けて書くと、段階的な成長プランが伝わります。

  • 開業時:社員1名(自分)+アルバイト2名
  • 6ヶ月後:社員1名+アルバイト3名(売上増加に合わせて増員)

売上予測の計算方法|根拠ある数字の作り方

事業計画書で最も重要かつ審査担当者が厳しくチェックするのが売上予測です。根拠のない数字は一発で見抜かれます。

飲食店の売上予測の基本公式

飲食店の売上は、以下の公式で計算します。

月間売上 = 席数 × 回転率 × 客単価 × 営業日数

それぞれの要素を分解して解説します。

席数:店舗の総座席数。カウンター・テーブル・小上がりなど座席タイプ別に把握します。

回転率:1日に1席が何回利用されるか。業態と営業時間帯で異なります。

業態ランチ回転率ディナー回転率
定食・ラーメン2.0〜3.0回転1.5〜2.0回転
カフェ1.5〜2.5回転1.0〜1.5回転
居酒屋1.5〜2.5回転
フレンチ・イタリアン1.0〜1.5回転0.8〜1.2回転

客単価:お客様1人あたりの平均支払額。メニュー構成から算出します。

営業日数:月間の営業日数。定休日を考慮して算出します。

具体的な売上予測の計算例

以下の条件で月間売上を計算してみましょう。

【モデル店舗:和食居酒屋(25席)】

条件ランチディナー
席数25席25席
回転率1.5回転1.2回転
客単価1,000円3,500円
営業日数25日/月25日/月

ランチ売上 = 25席 × 1.5回転 × 1,000円 × 25日 = 937,500円/月

ディナー売上 = 25席 × 1.2回転 × 3,500円 × 25日 = 2,625,000円/月

月間売上合計 = 3,562,500円

ただし、開業直後からこの売上を達成するのは現実的ではありません。事業計画書では、以下のように段階的な売上を設定するのが適切です。

時期達成率月間売上
開業〜3ヶ月目60%約214万円
4〜6ヶ月目75%約267万円
7〜12ヶ月目85%約303万円
2年目以降95%約338万円

審査担当者は「最初から100%の売上を見込んでいる計画」を信用しません。段階的に売上が伸びる計画を立て、それでも返済が可能であることを示すのが重要です。

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収支計画の作り方|月次P/Lで経営をシミュレーションする

売上予測を立てたら、次は経費を洗い出して月次の収支計画(P/L:損益計算書)を作成します。

飲食店の主要経費項目と比率の目安

飲食店の月次P/Lに含まれる経費項目と、売上に対する比率の目安は以下のとおりです。

経費項目売上比率の目安内容
食材費(原価)28〜35%食材・飲料の仕入れ費用
人件費25〜32%給与・社会保険料・福利厚生費
家賃8〜10%店舗の賃料・共益費
水道光熱費5〜8%電気・ガス・水道
減価償却費3〜5%内装・設備の減価償却
広告宣伝費3〜5%チラシ・SNS広告・グルメサイト掲載料
消耗品費1〜3%割り箸・紙ナプキン・洗剤など
通信費・雑費1〜2%電話・インターネット・その他
借入返済5〜8%融資の元金+利息

月次P/Lの具体的な作成例

先ほどの和食居酒屋(25席)の軌道に乗った時期(7〜12ヶ月目)のP/Lを作成します。

【月次P/L例:月商303万円の場合】

項目金額売上比率
**売上高****3,030,000円****100%**
食材費939,300円31.0%
人件費818,100円27.0%
**売上総利益****1,272,600円****42.0%**
家賃250,000円8.3%
水道光熱費181,800円6.0%
減価償却費120,000円4.0%
広告宣伝費90,900円3.0%
消耗品費45,450円1.5%
通信費・雑費30,300円1.0%
**販管費合計****718,450円****23.7%**
**営業利益****554,150円****18.3%**
借入返済(元金+利息)180,000円5.9%
**税引前キャッシュフロー****374,150円****12.3%**

この例では、月間約37万円のキャッシュフローが残ります。ここから税金(個人事業主の場合は所得税・住民税・事業税)を支払い、残りが自分の手取りとなります。

重要なのは、開業初期(売上達成率60%)でも返済が可能かを確認することです。

【開業初期:月商214万円の場合】

項目金額
売上高2,140,000円
食材費(31%)663,400円
人件費(27%)577,800円
固定費合計718,450円
営業利益180,350円
借入返済180,000円
**税引前キャッシュフロー****350円**

開業初期はほぼトントンの状態です。この期間を乗り越えるために、運転資金として最低でも6ヶ月分(約120万円〜180万円)を確保しておく必要があります。事業計画書の「必要な資金と調達方法」にこの運転資金を盛り込むことで、審査担当者に「リスクを理解している」と評価されます。

融資審査で見られるポイントと失敗パターン

事業計画書の内容が整っていても、審査に落ちるケースがあります。審査担当者の視点を理解し、よくある失敗を避けましょう。

審査担当者がチェックする5つのポイント

融資審査では、以下の5点が重点的にチェックされます。

1. 自己資金の割合 開業資金の3分の1以上を自己資金で賄えているかが基準です。自己資金が少なすぎると「本気度が低い」と判断されます。また、親族からの借入を自己資金に見せかける行為は、通帳の入出金履歴で発覚するため絶対に避けてください。

2. 飲食業の実務経験 同業種での実務経験が6年以上あると高く評価されます。未経験での開業は審査が厳しくなるため、最低でも1〜2年の実務経験を積んでから申請するのが望ましいです。

3. 売上予測の根拠 「席数 × 回転率 × 客単価 × 営業日数」の各要素に根拠があるかを確認されます。近隣の類似店舗のデータや、実際に通行量を調査した結果を添付すると説得力が増します。

4. 返済可能性 月次の収支計画から、毎月の返済額を確実に賄えるかをシミュレーションされます。開業初期の低迷期でも返済可能な計画になっているかがポイントです。

5. 個人の信用情報 住宅ローン・自動車ローン・クレジットカードの支払い状況も確認されます。過去に延滞や債務整理がある場合、融資は極めて厳しくなります。申請前にCICやJICCで自分の信用情報を確認しておきましょう。

よくある失敗パターンと対策

事業計画書で陥りやすい失敗パターンを5つ紹介します。

失敗1:売上予測が楽観的すぎる 「開業直後から満席を想定」「回転率を高く見積もりすぎ」は最も多い失敗です。 → 対策:開業初期は軌道時の60〜70%で計算する。近隣の同業態の実績データを調査して根拠にする。

失敗2:経費の見落とし 社会保険料、通信費、消耗品費、リース料、グルメサイトの掲載料など、細かい経費を計上し忘れるケースがあります。 → 対策:既存の飲食店経営者にヒアリングし、経費の漏れがないかチェックする。

失敗3:運転資金の見積もりが甘い 設備投資にばかり目が行き、開業後の運転資金を十分に確保していない計画が多いです。 → 対策:最低6ヶ月分の固定費(家賃+人件費+水道光熱費など)を運転資金として計上する。

失敗4:差別化ポイントが不明確 「おいしい料理を出す」「アットホームな雰囲気」だけでは差別化になりません。 → 対策:競合店を5店舗以上リサーチし、自店のポジショニングを明確に言語化する。価格帯・ターゲット・提供価値で具体的に差別化する。

失敗5:面談対策の不足 事業計画書を税理士やコンサルに丸投げで作成してもらった場合、面談で質問に答えられず不合格になるケースがあります。 → 対策:すべての数字の根拠を自分の言葉で説明できるようにしておく。計画書は必ず自分で作成するか、作成過程に深く関わる。

資金計画の立て方|必要資金と調達方法を整理する

事業計画書の「必要な資金と調達方法」は、融資審査の核心部分です。開業に必要な資金を漏れなく洗い出し、調達方法を明確にしましょう。

飲食店の開業資金の内訳

飲食店の開業に必要な資金は、大きく「設備資金」と「運転資金」に分かれます。

【設備資金の内訳例:25席の居酒屋の場合】

項目金額の目安
物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料)200万〜400万円
内装工事費300万〜600万円
厨房設備費200万〜400万円
家具・食器・備品50万〜100万円
看板・外装費30万〜80万円
レジ・POSシステム20万〜50万円
**設備資金合計****800万〜1,630万円**

【運転資金の内訳例】

項目金額の目安
仕入れ資金(初月分)30万〜50万円
家賃(6ヶ月分確保)150万〜180万円
人件費(3ヶ月分確保)150万〜250万円
水道光熱費(3ヶ月分)30万〜50万円
広告宣伝費(開業時)30万〜50万円
予備費50万〜100万円
**運転資金合計****440万〜680万円**

合計:1,240万〜2,310万円

資金調達計画の組み立て方

必要資金が把握できたら、どう調達するかを計画します。

調達方法金額例割合
自己資金500万円33%
日本政策金融公庫(融資)800万円53%
親族からの借入200万円14%
**合計****1,500万円****100%**

自己資金の割合は最低でも3分の1を目安にします。自己資金の比率が高いほど融資審査は有利になります。

日本政策金融公庫の新創業融資制度では、無担保・無保証人で最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)の融資が可能です。返済期間は設備資金で最長20年、運転資金で最長7年が上限です。

まとめ:事業計画書の仕上げと成功のポイント

記載内容が揃ったら、最後に事業計画書全体の完成度を高めるための仕上げを行い、提出に備えましょう。

数値の整合性を最終チェックする

事業計画書全体を通して、以下の数値が矛盾なくつながっているかを確認します。

  • 売上予測の客単価とメニュー表の価格帯が一致しているか
  • 従業員数と人件費の計算が合っているか
  • 設備投資額と減価償却費が連動しているか
  • 借入金額と月々の返済額が正しく計算されているか
  • 資金の調達額と使途の合計が一致しているか

数値の矛盾は審査担当者に最も悪い印象を与えます。第三者(税理士や中小企業診断士)にレビューしてもらうのが確実です。

創業計画書には以下の資料を添付すると説得力が大幅に向上します。物件の写真・間取り図、商圏分析データ(半径500m〜1kmの人口・世帯数・競合店舗数)、通行量調査の結果、メニュー表のサンプル、損益分岐点の計算です。

損益分岐点の計算式は「損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)」です。固定費が月100万円、変動費率(食材費率)が31%の場合、損益分岐点は約145万円となります。

事業計画書の書き方の要点を振り返る

飲食店の事業計画書の書き方について、改めて要点を整理します。

  • 事業計画書は融資審査のためだけでなく、自分のビジネスを客観的に検証する設計図
  • 日本政策金融公庫の創業計画書は8項目で構成。別紙資料で補足して説得力を高める
  • 売上予測は「席数 × 回転率 × 客単価 × 営業日数」で計算し、開業初期は60〜70%の達成率で見積もる
  • 収支計画は月次P/Lで作成し、開業初期でも返済可能な計画にする
  • 運転資金は最低6ヶ月分を確保し、自己資金は開業資金の3分の1以上を目安にする
  • 審査担当者は自己資金比率・実務経験・売上根拠・返済可能性・信用情報をチェックする
  • よくある失敗は楽観的な売上予測、経費の見落とし、運転資金の不足

事業計画書の作成は手間がかかりますが、このプロセスを丁寧に進めることが開業後の安定経営につながります。まずは日本政策金融公庫のテンプレートをダウンロードし、各項目を埋めるところから始めてみてください。

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