「飲食店を開業するには、どんな資格が必要なのか?」開業準備中の方が必ず直面する疑問です。
結論からお伝えすると、飲食店経営に必須の資格は「食品衛生責任者」と「防火管理者」の2つだけです。ただし、業態によっては追加資格や届出が必要になり、知らずに営業すると違法状態になるケースもあります。
この記事では、2026年最新の制度に基づき、飲食店経営に必須の資格・業態別の追加資格・任意で取得すべき資格・申請手順と費用まで完全網羅で解説します。
飲食店経営に「必須」の資格2つ
すべての飲食店で取得が必要な資格は、たった2つです。
必須資格1:食品衛生責任者(全飲食店で必須)
食品衛生法により、飲食店は店舗に1人以上の食品衛生責任者を配置する義務があります。
- 取得方法:保健所などが実施する養成講習会(1日6時間)を受講
- 受講料:10,000〜12,000円程度(自治体により異なる)
- 資格期限:有効期限なし(更新不要)
- 免除条件:栄養士・調理師・製菓衛生師などの有資格者は受講免除
オンライン受講も可能な自治体が増えており、東京都・大阪府などでは1万円程度でeラーニング受講できます。
必須資格2:防火管理者(収容人数30人以上の店舗で必須)
消防法により、収容人数30人以上の飲食店には防火管理者の選任が義務付けられています。
- 取得方法:日本防火・防災協会主催の講習会を受講
- 資格期限:有効期限なし(5年ごとの再講習推奨)
- 配置義務:店舗ごとに1名以上
居抜き物件の場合、前テナントの管理者引き継ぎは不可で、新たに選任が必要です。
業態別に「必要になる」資格・許可
業態によっては、上記2つに加えて追加の資格・許可が必要です。
深夜営業(24時まで)の場合:深夜酒類提供飲食店営業届出
深夜0時を超えて酒類を提供する飲食店は、警察署への届出が必須です。
- 届出先:所轄警察署生活安全課
- 手数料:無料(書類作成代行を頼むと3〜5万円)
- 必要書類:店舗図面、メニュー表、住民票など
- 届出期限:営業開始日の10日前まで
バー・スナック・キャバクラの場合:風俗営業許可
接待行為(席に座って飲食を共にする)を伴う場合は、風俗営業許可が必要です。
- 許可先:所轄警察署経由で公安委員会
- 手数料:24,000円
- 要件:店舗構造、立地、欠格事由なし
- 取得期間:申請から2〜3ヶ月
喫茶店営業(軽食のみ)の場合:飲食店営業許可ではなく「喫茶店営業許可」
調理操作を伴わない軽飲食のみの店は、喫茶店営業許可で開業できます。ただし、加熱調理を行う場合は飲食店営業許可が必要です。2021年6月の食品衛生法改正以降、両者の境界が見直されており、所轄保健所での確認が必要です。
酒類販売(テイクアウト・販売)の場合:酒類販売業免許
店内提供ではなく、ボトルや小売酒類を持ち帰り販売する場合は、税務署の酒類販売業免許が必要です。
- 申請先:所轄税務署
- 手数料:30,000円
- 取得期間:2〜3ヶ月
- 要件:販売場所の確保、欠格事由なし
テイクアウト・デリバリーの場合の注意点
通常の飲食店営業許可で、店内調理した料理のテイクアウト・デリバリーは可能です。ただし、惣菜製造業として大量生産・卸売する場合は別途「惣菜製造業許可」が必要です。
任意で取得すると役立つ資格5選
法律上は必須ではないものの、取得しておくと経営の幅が広がる資格です。
任意資格1:調理師免許
調理師法に基づく国家資格です。
- 取得方法:調理師学校卒業(1〜2年)または実務経験2年+試験合格
- 受験料:6,400円
- メリット:食品衛生責任者の取得免除、料理人としての信頼性向上、独立時の融資審査でプラス評価
任意資格2:栄養士・管理栄養士
健康志向のお店、病院食提供店などでは強みになります。栄養計算メニューの開発、健康相談機能の付加で差別化可能です。
任意資格3:ソムリエ・利き酒師
ワインバー・日本酒バーなどのお酒を主軸にした店で取得すると、メディア露出や接客の質で大きな差別化ができます。
- ソムリエ呼称資格認定試験:受験料29,600円
- 利き酒師:取得費用 約10万円
任意資格4:菓子製造業許可
ケーキ・パンを製造販売する場合、別途菓子製造業許可が必要です。スイーツのテイクアウト販売を行うカフェでは検討必須です。
任意資格5:簿記検定(2級以上)
経理・会計を自分で行う上で、簿記2級以上があると確定申告・節税対策・銀行融資交渉で大きく有利になります。詳しい節税対策は飲食店の節税方法10選|経費・控除・法人化まで解説を参照してください。
開業時に必要な「届出」の完全リスト
資格と並行して、各種届出が必要です。届出漏れは違法操業となり、営業停止や罰金につながります。
開業前に必ず提出する届出
- 飲食店営業許可:保健所(手数料16,000〜18,000円、取得期間2〜3週間)
- 防火対象物使用開始届:消防署(営業開始7日前まで)
- 食品衛生責任者選任届:保健所
- 防火管理者選任届:消防署(収容人数30人以上)
- 深夜酒類提供飲食店営業届:警察署(深夜営業の場合のみ)
- 個人事業の開業届:税務署(開業から1ヶ月以内)
- 青色申告承認申請書:税務署(開業から2ヶ月以内)
雇用関係の届出(スタッフ雇用時)
- 労災保険関係成立届:労働基準監督署
- 雇用保険適用事業所設置届:ハローワーク
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届:年金事務所(法人または常時5人以上の従業員)
法人化する場合の追加手続き
- 法人設立登記:法務局(資本金により登録免許税15万円〜)
- 法人設立届出書:税務署、都道府県、市区町村
法人化のタイミング判断は飲食店の法人化タイミングは?判断基準と手順を解説で解説しています。
資格取得の手順|開業前にやるべきスケジュール
開業の半年前から計画的に進めるのが理想です。
開業6ヶ月前:食品衛生責任者の受講
物件決定後すぐに、食品衛生責任者の養成講習を受講しましょう。eラーニング型なら数日で取得可能です。
開業3ヶ月前:物件・図面確定後の保健所事前相談
飲食店営業許可は、図面を持って保健所に事前相談するのがベストです。設備基準(シンクの数、手洗器の位置など)を満たしているか確認できます。
開業1ヶ月前:防火管理者・各種届出
工事完了の目処が立ったら、防火管理者の選任、消防署への届出、警察署への深夜営業届などを並行して進めます。
開業2週間前:飲食店営業許可の現地検査
保健所の担当者が店舗に来訪し、設備が基準を満たしているかを確認します。問題があれば営業開始が遅れるため、事前相談での指摘事項を必ずクリアしておきましょう。
開業当日〜1ヶ月:税務署届出と各種設定
開業日から1ヶ月以内に税務署へ開業届を提出します。青色申告承認申請書も忘れずに。
まとめ:必須は2つ、業態次第で追加|計画的に取得を
飲食店経営に法律上必須の資格は「食品衛生責任者」「防火管理者」の2つです。これは1万円程度・1日講習で取得可能で、誰でもクリアできます。
ただし、業態によっては深夜酒類提供届・風俗営業許可・酒類販売業免許などが追加で必要となり、これらを怠ると違法状態になります。
開業準備は資格取得だけでなく、開業届・労務手続き・税務届出まで多岐にわたります。半年前から逆算してスケジュールを組み、漏れなく進めましょう。
開業全体の流れは飲食店経営するには?開業手順と成功条件【2026年完全ガイド】で解説しています。