「うちの原価率って、高いのだろうか」。毎月の仕入れ伝票を見ながら、そう不安に思ったことはないでしょうか。

飲食店の原価率は「30%が目安」と言われますが、日本フードサービス協会の調査によると飲食業界の実態平均は約37.5%まで上昇しています。つまり、多くの飲食店が目安を超えた状態で営業しているのが現実です。

この記事では、原価率の基本的な計算方法から、業態別の目安、原価率が高くなる原因、そして具体的に下げる方法まで、数字と計算例を交えてわかりやすく解説します。「うちの店ではどうなのか」をイメージしながら読み進めてください。

原価率の基本|計算式と飲食店経営での意味

原価率を正しく理解することが、利益改善の第一歩です。まずは基本の計算式を押さえましょう。

原価率の計算式と具体的な計算例

原価率の計算式はシンプルです。

原価率(%)= 原価(材料費)÷ 売上 × 100

例えば、ある月の売上が300万円で、食材の仕入れ費用が90万円だった場合は以下のとおりです。

90万円 ÷ 300万円 × 100 = 原価率30%

この「30%」が飲食業界で一般的に目安とされる数値です。しかし、同じ月商300万円の居酒屋でも、仕入れが112万円なら原価率は37.3%になります。わずか22万円の仕入れ差が、年間で264万円もの利益の差を生むことになります。

メニュー単品でも計算してみましょう。

  • 唐揚げ定食(売価980円、材料費310円):310 ÷ 980 × 100 = 原価率31.6%
  • 生ビール(売価550円、材料費110円):110 ÷ 550 × 100 = 原価率20.0%
  • 刺身盛り合わせ(売価1,480円、材料費680円):680 ÷ 1,480 × 100 = 原価率45.9%

このように、メニューごとに原価率は大きく異なります。全体の原価率を30%に収めるためには、個々のメニューの原価率を把握し、バランスをとることが重要です。

原価率とFLコストの関係

原価率を語るうえで欠かせないのが「FLコスト」という指標です。FLコストとは、Food(原材料費)とLabor(人件費)を合計した金額を指します。

FLコスト率(%)=(原材料費 + 人件費)÷ 売上 × 100

健全な飲食店経営の目安は以下のとおりです。

指標目安危険ライン
原価率(F)28〜32%35%超
人件費率(L)25〜30%33%超
FLコスト率55〜60%65%超
営業利益率5〜10%3%未満

月商300万円の居酒屋で計算すると、FLコスト率60%なら営業にかけられる原価+人件費は180万円。原価率30%(90万円)+人件費率30%(90万円)=180万円で、家賃や光熱費を引いた残りが利益になります。FLコスト率が65%を超えると、利益がほぼ残らない危険な状態です。

業態別の原価率目安|あなたの店は平均と比べてどうか

原価率の「正解」は業態によって異なります。自店の業態における適正値を知ることが大切です。

主要業態の原価率一覧

業態ごとの原価率目安は以下のとおりです。

業態食材原価率ドリンク原価率全体原価率の目安
居酒屋30〜35%15〜25%28〜32%
カフェ・喫茶店25〜30%10〜20%20〜28%
ラーメン店30〜33%30〜33%
イタリアン・フレンチ28〜33%15〜25%25〜30%
焼肉店35〜45%15〜20%32〜40%
寿司店40〜50%15〜25%35〜45%
定食屋・食堂33〜38%33〜38%
バー・ダイニングバー25〜35%10〜20%18〜25%

注目すべきポイントは、ドリンク比率が高い業態ほど全体の原価率が下がるということです。居酒屋やバーはドリンク原価率が10〜25%と低いため、ドリンクの注文比率を上げることが利益改善の鍵になります。

原価率の業界平均と実態のギャップ

「目安は30%」と言われる一方で、実態はどうでしょうか。

近年の食材価格高騰により、飲食業界の平均原価率は上昇傾向にあります。2024年時点で、日本フードサービス協会のデータでは外食産業全体の原価率は約37.5%と報告されています。

この上昇の主な要因は以下のとおりです。

  • 輸入食材の価格高騰(円安の影響)
  • 国産食材の値上がり(飼料・肥料コスト増)
  • 物流費の上昇
  • 光熱費の上昇による間接的なコスト増

つまり、現在の環境で原価率30%を維持できている店舗は、かなり優秀と言えます。まずは自店の原価率を正確に計算し、業態別の目安と比較することから始めましょう。

原価率が高くなる原因TOP5|見落としがちな落とし穴

「なぜか利益が残らない」と感じる場合、以下の5つの原因が潜んでいることが多いです。

オーバーポーションと食材ロス

原価率が高くなる最大の原因は「オーバーポーション(分量過多)」と「食材ロス」です。

原因1:オーバーポーション レシピどおりの分量を守らず、スタッフの感覚で盛り付けていると、1食あたり10〜20%の材料費増加につながります。例えば、唐揚げ定食の鶏肉が規定量150gのところ180gになっていたら、材料費は20%増です。

原因2:食材ロス(廃棄) 仕入れた食材を使い切れずに廃棄する「食材ロス」は、飲食店全体で仕入れの5〜10%を占めるとされています。月の仕入れが100万円なら、5〜10万円が捨てられている計算です。

仕入れ・管理の問題点

原因3:仕入れ価格の見直し不足 開業時から同じ業者に同じ価格で発注し続けていませんか。定期的に相見積もりを取るだけで、5〜15%のコストダウンが実現するケースは珍しくありません。

原因4:在庫管理の甘さ 在庫を正確に把握していないと、余分な発注が増えます。冷蔵庫の奥で期限切れになっている食材がないか、今すぐ確認しましょう。先入れ先出し(FIFO)のルールが徹底されていない店舗は、食材ロスが2〜3倍に膨らむことがあります。

原因5:メニュー構成の偏り 原価率の高いメニューばかりが売れている状態は危険です。例えば、刺身盛り(原価率45%)が看板メニューで注文の40%を占めていたら、全体の原価率は高くなります。高原価メニューと低原価メニューのバランスを意識したメニュー設計が必要です。

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原価率を下げる具体的な方法7選

原因がわかったら、次は具体的な改善策です。即効性の高い順に紹介します。

仕入れとオペレーションの改善

方法1:レシピカードを作成し、ポーション管理を徹底する 全メニューの材料と分量を「レシピカード」にまとめ、キッチンに掲示しましょう。スケールを使って計量する習慣をつけるだけで、オーバーポーションによるコスト増を防げます。

方法2:仕入れ先を複数確保し、定期的に相見積もりを取る 最低でも3社以上の仕入れ先を確保し、半年に1回は相見積もりを取りましょう。同じ品質の食材でも、業者によって5〜15%の価格差があります。

方法3:発注量を適正化し、食材ロスを削減する 曜日別・天候別の来客数データを分析し、必要な量だけを発注しましょう。特に生鮮食品は「足りなくなったら追加発注」のほうが、廃棄ロスを減らせます。

方法4:歩留まりを計算して、使い切りメニューを開発する 野菜の端材でスープを作る、肉のトリミングでまかないを作るなど、食材を余すことなく使い切る工夫が原価率改善に直結します。キャベツの芯や大根の葉なども、調理法次第でメニュー化できます。

メニュー構成と価格戦略の見直し

方法5:高粗利メニューの注文比率を上げる ドリンク、サイドメニュー、デザートは原価率10〜25%で利益を稼げる商品です。「セットにすると100円引き」「デザート付きランチ」など、高粗利メニューの注文を促す仕組みを作りましょう。

方法6:メニュー数を絞り込む メニュー数が多いほど、食材の種類が増え、ロスが発生しやすくなります。売上貢献度の低いメニュー(月間注文数が全体の3%未満)は思い切って廃止し、食材の種類を減らしましょう。メニューを20%削減するだけで、食材ロスが10〜15%改善するケースもあります。

方法7:季節食材と旬の食材を活用する 旬の食材は供給量が多いため価格が安く、品質も良好です。季節限定メニューとして打ち出せば、お客様の期待感も高まり、一石二鳥です。

原価率だけで判断しない|粗利額で考える重要性

原価率は重要な指標ですが、原価率だけを見て経営判断するのは危険です。

原価率と粗利額の違いを理解する

以下の2つのメニューを比較してみましょう。

メニュー売価材料費原価率粗利額
枝豆380円50円13.2%330円
ステーキ2,980円1,200円40.3%1,780円

枝豆は原価率13.2%と非常に優秀ですが、粗利額は330円。一方、ステーキは原価率40.3%と高いものの、粗利額は1,780円で枝豆の5倍以上です。

もし「原価率が高いから」とステーキをメニューから外してしまったら、1杯あたり1,780円の粗利を失うことになります。

粗利ミックスで全体の利益を最大化する

経営で重要なのは「全体の粗利額を最大化すること」です。そのために、以下の考え方を取り入れましょう。

  • 集客メニュー(原価率高め):お客様を呼ぶための目玉商品。原価率40%以上でも、来店のきっかけになるなら価値がある
  • 利益メニュー(原価率低め):ドリンク、サイドメニュー、デザートで利益を確保する
  • 看板メニュー(バランス型):お店の個性を出すメニュー。原価率は30%前後を目指す

月商300万円の居酒屋で、全体原価率を35%から32%に3ポイント下げると、月の粗利は9万円増えます。年間で108万円の利益改善です。ただし、原価率を下げすぎてお客様の満足度が下がっては本末転倒。粗利額と顧客満足のバランスを常に意識しましょう。

メニュー別原価率の管理方法|Excelでできる実践テクニック

原価率を改善するには、メニューごとの原価率を「見える化」することが不可欠です。

原価率管理表の作り方

ExcelやGoogleスプレッドシートで以下の項目を管理しましょう。

項目入力内容
メニュー名唐揚げ定食
売価(税抜)980円
材料1(品名・単価・使用量)鶏もも肉・280円/100g・150g
材料2キャベツ・150円/個・1/8個
材料3米・2,500円/5kg・200g
材料費合計310円
原価率31.6%(自動計算)
粗利額670円(自動計算)
月間注文数200食
月間粗利合計134,000円(自動計算)

この管理表を全メニュー分作成し、月1回のペースで仕入れ価格を更新することが理想です。

原価率管理に便利なツール

Excel以外にも、原価率管理に役立つツールがあります。

  • Foodics / Airレジ:POSレジと連動して自動で原価率を算出。リアルタイムで数値を確認できる
  • クロスポイント:飲食店向け原価管理システム。仕入れデータから自動で原価率を計算
  • Googleスプレッドシート:無料で使え、スマホからも確認可能。複数人での同時編集にも対応
  • freee / マネーフォワード:会計ソフトの数値から、月次の原価率推移を分析できる

小規模店であれば、まずはGoogleスプレッドシートで十分です。大切なのはツールの種類ではなく、「毎月必ず数字を確認する」習慣をつけることです。

まとめ:原価率を正しく計算し、利益が残る飲食店をつくる

飲食店の原価率について、改めてポイントを整理します。

この記事の要点チェックリスト

  • 原価率の計算式は「原価 ÷ 売上 × 100」。まずはこの基本を押さえる
  • 業態別の目安を知り、自店の現状と比較する(居酒屋28〜32%、カフェ20〜28%、焼肉32〜40%など)
  • 業界の実態平均は約37.5%。30%を維持できていれば優秀
  • 原価率が高くなる原因TOP5はオーバーポーション、食材ロス、仕入れ価格、在庫管理、メニュー構成の偏り
  • 改善策はレシピカード作成、相見積もり、発注量適正化、高粗利メニュー訴求、メニュー数の絞り込みなど
  • 原価率だけでなく「粗利額」で考えることが利益最大化の鍵
  • メニュー別の原価率管理表を作り、月1回は数字を確認する習慣をつける

今日から始められるアクション

原価率の管理は、飲食店経営の根幹です。まずは今月の原価率を計算するところから始めてみてください。数字を把握することで、改善すべきポイントが明確になります。具体的には、今月の仕入れ伝票を集め、売上と照らし合わせて全体原価率を算出する。次に、主力メニュー10品の個別原価率を計算する。この2つを行うだけで、自店の課題が見えてきます。

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