口コミを増やしたい。でも「書いてください」とお願いするのは、どうしても気が引ける。

そう感じている飲食店オーナーは多いと思います。そして、その感覚は間違っていません。良いお店ほど、口コミをお願いできないからです。

この記事でお伝えするのは、お願いの技術ではありません。クチコミは書かせるものではなく、書きたいと思わせるものだからです。

東京・浅草のもんじゃ焼CHICOは、Googleクチコミを283件から3,600件超まで増やしました。自作自演はゼロ、Googleのガイドラインを守った上での数字です。ただし、最初にやった声かけの強化では、増え方はほとんど変わりませんでした。

変わったのは、お願いする前を変えてからです。この記事では、その順番を解説します。

お願いの仕方を変えても、増え方は変わりませんでした

声かけを強化しても伸びず、体験を変えてから増え始めた

CHICOがクチコミを増やそうと決めたとき、最初に手をつけたのは声かけでした。

スタッフ全員でお願いする回数を増やす。伝票を渡すときに一言添える。トークを揃える。どれも真っ当な施策です。

ところが、これで増え方が変わることはありませんでした。

なぜ声かけだけでは増えないのか

お客様の中に「書きたい」という気持ちが生まれていなければ、どれだけお願いしても続かないからです。

満足していない人にお願いすれば、断られます。断られた経験が重なると、スタッフは声をかけなくなります。そして施策そのものが止まります。

声かけは最後の一手であって、最初の一手ではありません。

増え方が変わったのは、声かけの前を変えてから

CHICOで実際に変えたのは、次のようなことでした。

初めて来たお客様に、スタッフが食べ方を丁寧に説明する。料理が出たときに、写真を撮りたくなる見た目になっている。お客様が迷っているタイミングで、ちょうど良い距離感で声をかける。帰り際に「今日は楽しんでいただけましたか」と自然に聞ける。

どれも口コミ対策と呼べるものではありません。ただの接客です。

けれど、ここに手を入れてから、クチコミの増え方が変わりました。

クチコミは、接遇がそのまま数字になったもの

クチコミ評価は接遇レベルが数字になったもの

Googleクチコミの評価は、接遇レベルが数字になったものです。

評価が高い店は、例外なく接遇の質が高い。逆に言えば、評価が上がらない店は、接遇のどこかに詰まりがあります。

3,000件のクチコミに書かれていたこと

CHICOに寄せられたクチコミを読み返すと、味だけに触れたものは実は多くありません。

「店員さんがすごく感じよかった」 「初めてだったけど、すごく丁寧に教えてくれた」 「雰囲気が良かった」 「写真を撮りたくなる料理だった」 「帰る時まで気持ちよかった」

こうした言葉が並びます。お客様が書きたくなるのは、料理そのものより、その店で過ごした時間全体についてです。

星評価と来店率の関係は飲食店のクチコミ評価と来店率で詳しく解説しています。

クチコミは、お客様からの「ありがとう」

クチコミを集客の手段としてだけ見ると、お願いすることに抵抗が出ます。

そうではなく、お客様からの「ありがとう」を受け取る場所だと考えると、見え方が変わります。良い時間を過ごしてもらえたなら、それを言葉にしてもらう機会を作るのは、押し付けではありません。

そして積み上がった評価は、施策を止めても消えません。ネット上に残る資産になります。

増えない店は、3つのどれかが欠けている

やり方・あり方・仕組みの3つが揃って初めて回る

クチコミが増えない店を見ていくと、原因は3つのどれかに集約されます。

要素中身欠けるとどうなるか
やり方手順・ツール・導線やっているのに増えない。形だけになる
あり方意識・文化・なぜやるのか一部の人だけの仕事になる
仕組み自動化・継続・返信・数字の確認続かない。担当者が辞めると止まる

3つが揃って初めて回り始めます。

やり方だけでは形骸化する

QRコードを置いた。声かけのトークも決めた。それでも増えない。

この状態はよくあります。手順はあるのに、スタッフが「なぜやるのか」を理解していないと、形だけの作業になります。お客様にも、その温度は伝わります。

あり方だけでは仕組みにならない

逆に、店主に強い想いがあっても、手順が決まっていなければ再現できません。

店主がいる日は増えて、いない日は増えない。これは仕組みになっていない状態です。

3つを同時に進める

順番としては、あり方を共有してから、やり方を決め、仕組みで支えるのが自然です。ただし、どれか1つを完成させてから次に進む必要はありません。

小さく3つとも動かし始めるほうが、結果的に早く回り始めます。

やり方|クチコミが集まる4つの導線を重ねる

声かけ・卓上QR・LINE・予約サイトの4つを重ねる

クチコミが集まる導線は、大きく4つあります。

1つに頼らず、複数を重ねるのが前提です。どれか1つでは、そこを通らなかったお客様を取りこぼします。

スタッフのお声かけ

最も強い導線です。人から言われたことは、貼り紙より届きます。

ただし前提として、お客様が満足している必要があります。体験が整っていれば、最後の一言は押し売りではなく、応援のお願いとして伝わります。

「もし今日のお時間が良い思い出になっていたら、口コミで応援していただけると嬉しいです」

この形なら、断られても角が立ちません。声かけの具体的な組み立ては口コミ依頼方法ガイドにまとめています。

卓上・伝票まわりのQRコード

声をかけそびれたお客様を拾う導線です。

置く場所が重要で、卓上に置きっぱなしにするより、伝票と一緒に渡すほうが反応が出ます。お会計は、その日の体験を振り返るタイミングだからです。

QRコードの作り方は口コミQRコード作成ガイドで解説しています。

LINE公式アカウント

来店したその場では書けなかった人に、後から届く導線です。

帰宅してから、写真を見返しながら書いてもらえることもあります。LINEは再来店の案内にも使えるので、二重に効きます。

運用は飲食店LINE公式アカウント活用法にまとめています。

予約サイト・メール

予約経由のお客様には、来店後のフォローメールが使えます。

ここは自動化しやすい導線です。仕組みとして組んでおけば、手間がかからないまま動き続けます。

あり方|断られることを、許していますか

なぜやるかの共有・全員の仕事・断られてよい

同じ手順を入れても、増える店と増えない店に分かれます。分かれ目は3つです。

「なぜやるのか」が共有されているか

「クチコミを増やせ」とだけ言われたスタッフは、ノルマとして受け取ります。

そうではなく、良い時間を過ごしてもらえた証としてクチコミがあること、それが次のお客様の判断材料になることを共有すると、声のかけ方が変わります。

言葉にして、繰り返し伝えることでしか共有されません。一度言っただけでは変わりません。

一部の人だけの仕事になっていないか

声をかけるのがいつも同じスタッフだけ、という状態はよくあります。

この状態だと、その人が休んだ日は動きません。辞めたら止まります。全員が自分の仕事だと思えているかが分かれ目です。

断られることを、許しているか

ここが一番効きます。

断られてもいいと決まっていないと、スタッフは声をかけられません。失敗が許されない空気の中では、誰も動きません。

「10人に声をかけて2人書いてくれたら十分」と店として言い切ってしまうこと。これだけで、現場の動きが変わります。

仕組み|担当者が辞めても止まらない形にする

返信・投稿・順位のモニタリングを回し続ける

やり方とあり方が揃っても、続かなければ意味がありません。仕組みで支えます。

届いたクチコミには返信する

返信は、書いてくれた人へのお礼であると同時に、これから読む人への情報でもあります。

返信のある店は、見ている人に「ちゃんとやっている店だ」と伝わります。低評価への向き合い方も含めて見られています。

パターン別の返信例は飲食店の口コミ返信例文20選にまとめています。

月に一度、数字を見る

見るのは複雑な指標ではありません。今月クチコミが何件増えたか、Googleマップが何回見られたか。この2つで十分です。

CHICOも、最初に見ていたのはこの2つだけでした。毎月追いかけていたから、何をした月に伸びたのかが分かるようになりました。

MEOの数値の見方はMEO対策のKGI・KPI設定で詳しく解説しています。

誰がやるかを決めておく

「気づいた人がやる」は、続きません。

返信は誰が、いつ見るのか。声かけの状況は、誰が確認するのか。決めておかないと、忙しい時期に真っ先に止まります。

業態別|どこに力を入れるか

業態によって力を入れる場所が変わる

やることの骨格は同じですが、お客様が写真を撮る瞬間や、席にいる時間の長さが業態によって違います。力を入れる場所を変えると、同じ手間で結果が変わります。

居酒屋・ダイニングバー

複数人での来店が多いので、幹事にあたる方に声をかけるのが効きます。その方が動くと、同席した方にも伝わります。

一方で、お酒が入ると書く行為そのものが億劫になります。会計時ではなく、料理が出揃って盛り上がっているタイミングでQRを見せるほうが反応が出ます。

具体的な進め方は居酒屋の集客方法15選にもまとめています。

カフェ・喫茶

写真が主役になる業態です。提供時の見た目に手を入れるだけで、撮影される回数が変わります。

滞在時間が長いので、席にいる間に書いてもらえる余地があります。卓上のQRが最も効く業態です。

カフェの口コミ集客術で詳しく解説しています。

ラーメン・そば・うどん

滞在時間が15〜20分と短く、回転も速い業態です。ゆっくり声をかける時間がありません。

券売機のまわり、卓上、退店動線の3箇所にQRを置いて、目に入る回数を増やすほうが現実的です。声かけは「ありがとうございました」に一言添える程度に絞ります。

焼肉・寿司・和食

客単価が高く、特別な日に使われることが多い業態です。お客様の側にも「良い時間だった」という実感が残りやすくなります。

締めのタイミングで丁寧に一言添えると、長く濃い内容のクチコミが書かれます。件数だけでなく、内容の厚みで差がつく業態です。

最初の30日でやること

最初の30日でやること

全部を同時に始めると、どれも中途半端になります。順番に進めてください。

やることかける時間
1週目お客様が一番笑顔になる瞬間を探す。まだ声はかけない毎日5分の観察
2週目QRコードを用意し、伝票と一緒に渡す形にする2時間
3週目「断られてよい」を共有し、声かけを始める朝礼で10分
4週目件数とマップ閲覧数を記録する5分

1週目に声をかけない理由

いきなり声かけから始めると、体験が整っていない状態でお願いすることになります。断られる回数が増え、スタッフが動かなくなります。

最初の1週間は観察だけにしてください。どの瞬間にお客様の表情が変わるのか。それが分かってから声をかけると、断られる回数が減ります。

30日後に見ること

1ヶ月経ったら、件数とマップ閲覧数を先月と比べます。

動いていれば、その月にやったことが効いています。動いていなければ、体験のどこかがまだ整っていません。声かけの回数を増やすのではなく、もう一度1週目に戻ってください。

やってはいけない3つのこと

レビューゲーティング・特典との交換・やらせは行わない

増やしたい気持ちが強いほど、やってはいけない方向に手が伸びます。3つ挙げます。

評価によってお客様を振り分ける

満足度を先に聞いて、高評価の人だけをGoogleへ誘導する。低評価になりそうな人は別の窓口へ流す。

この手法はレビューゲーティングと呼ばれ、Googleの利用規約で明確に禁止されています。

すべてのお客様に平等にご案内する。これが原則です。低評価が入ることもありますが、それも含めて店の実像です。

割引や特典と引き換えに依頼する

「クチコミを書いてくれたらドリンク1杯サービス」

分かりやすい施策に見えますが、Googleのポリシー違反です。特典と引き換えに得た評価は、本当の満足を表していません。

やらせ・自作自演・購入

論外ですが、実際に持ちかけてくる業者は存在します。

リスクはやらせ口コミのリスクとは?にまとめています。アカウント停止だけでなく、発覚したときに失うものが大きすぎます。

CHICOの3,600件も、自作自演ゼロ、ガイドライン遵守が前提です。正しい方法で積み上げたから、資産として残っています。

全国1位でなくていい。半径3〜5kmで1位を取る

狙うのは全国ではなく半径3〜5kmの地域No.1

クチコミやMEOに取り組むとき、大手チェーンと同じ土俵に立つ必要はありません。

飲食店を探している人は「近くの居酒屋」「駅名+ランチ」で検索します。つまり勝負するのは、半径3〜5kmの範囲です。

その範囲なら、勝てる可能性がある

同じエリアの競合を実際に見てみてください。クチコミが2桁で止まっている店、返信をしていない店、写真が少ない店が並んでいるはずです。

その中で件数と評価を積み上げれば、比較のテーブルで選ばれます。全国規模の話ではありません。

地域で選ばれると、集客コストが下がる

クチコミが積み上がると、マップでの露出が増えます。露出が増えると、広告を出さなくても新規が来ます。

CHICOが広告費0円のまま月商を300万円伸ばせたのは、この構造ができたからです。

一度きりの施策ではなく、回り続けるサイクルとして考えてください。接遇を改善する、お客様をフォローする、Googleへ案内する、クチコミが積み上がる、集客が加速する、集客コストが下がる。この順番です。

283件から3,600件超までに起きたこと

CHICOのクチコミは、2024年5月時点で283件でした。そこから約2年で3,600件を超えています。

急に増えたわけではありません。月に100件前後ずつ、積み上がっていきました。

件数が11倍になっても、評価は下がっていない

件数を増やすと平均点が下がるのではないか、と心配される方がいます。

CHICOの場合、件数が11倍になる過程で平均点は下がりませんでした。むしろ上がっています。

理由は明確で、体験を整えてから声をかけているからです。満足した人が書いているので、評価が下がる方向には動きません。

無理に件数だけを追うと、この逆が起きます。

月商は広告費0円で+300万円

クチコミが増えたことで、Googleマップからの新規来店が増えました。

広告もグルメサイトの掲載も使わずに、月商が300万円ほど伸びています。掲載費や広告費をかけていないので、増えた分がそのまま残ります。

この2年間に何をしたのかは、渡邉さん本人が48分のインタビューで話しています。

よくある質問

Q. クチコミはどれくらいの期間で増えますか?

体験を整えるところから始めるので、最初の1〜2ヶ月は動きが見えにくいです。CHICOも、目に見えて増え始めるまでに数ヶ月かかりました。声かけだけを強化した時期は、ほとんど変わりませんでした。

Q. 何件を目指せばいいですか?

同じエリアの競合を見て、その上を狙うのが現実的です。全国の店と比べる必要はありません。半径3〜5kmの範囲で、比較されたときに選ばれる件数と評価があれば十分です。

Q. 低評価が入るのが怖いのですが

すべてのお客様に平等に案内すれば、低評価も入ります。ただし件数が積み上がれば、1件の低評価が平均点に与える影響は小さくなります。返信で誠実に向き合っている姿勢のほうが、読む人には伝わります。

Q. スタッフが声をかけてくれません

「断られてもいい」と店として言い切れているか確認してください。失敗が許されない空気があると、誰も動けません。10人に声をかけて2人書いてくれたら十分、という基準を共有するところから始めます。

Q. QRコードを置いているのに増えません

置く場所と渡し方を見直してください。卓上に置きっぱなしより、伝票と一緒に渡すほうが反応が出ます。そして、その前の体験が整っているかどうかが前提になります。

Q. 返信は全件したほうがいいですか

できるなら全件が理想です。難しい場合は、低評価と、内容の濃い高評価を優先してください。返信の有無は、これから来る人が見ています。

Q. 業者に頼んだほうが早いですか

やらせや購入を持ちかける業者は避けてください。正しい方法で導線と仕組みを整える支援であれば、時間を買う意味はあります。判断の基準は、レビューゲーティングや特典との交換を勧めてこないかどうかです。

まとめ

クチコミは、書かせるものではなく、書きたいと思わせるものです。

お願いの技術を磨く前に、お客様の中に「書きたい」という気持ちが生まれているかを見てください。そこが整えば、最後の一言は自然に出せるようになります。

そして増える店は、やり方・あり方・仕組みの3つが揃っています。手順だけでは形骸化し、想いだけでは続きません。

CHICOが283件から3,600件超まで積み上げられたのも、特別な裏技があったからではありません。声かけの前を変え、全員の仕事にし、続く形にした結果です。

まずは、お客様が一番笑顔になる瞬間がどこかを探してみてください。そこが、クチコミにつながる場所です。